2019年 アルゼンチンサッカー研修レポート
【引率者記】
今回初めての試みであるサッカー部の姉妹校サッカー研修は大成功に終わったと確信しています。サッカーの競技力向上のみならず、毎年行われている姉妹校派遣事業と同様に文化的な面も生徒は学ぶことができました。生徒たちにとっても私にとっても非常に刺激的で多くの高校生が体験できないような事ばかりであったと感じています。
今回の研修では、アルゼンチンのサッカーを学ぶといった側面もあり、ボールを保持して試合の中で主導権を握ることができるようにトレーニングを組んでいただきました。顔合わせの際に私たちのチームレベルに合わせた指導をお願いしたことや長時間の移動もあり、初日~3日目まではコンディションを考慮しながらボールをつなぐためのパスやファーストタッチの基礎的なトレーニングを重点的に行いました。日本でもこの手のトレーニングはおそらく多くのチームで行われており、私も現役時代に取り組んだものに近いトレーニングでありました。
しかし、ここで大きく異なる点がありました。それはパスの受ける目安の位置にコーンやポールを置くのだが、それらを試合の中での相手選手に見立てることを強く強調している点です。トレーニングをメインで見てくださったヘッドコーチのFrancisco Bersce さん(通称ペッピー)は繰り返し、ボールを受ける前には相手のマークを外す動きをすることや次にパスを出す方向を見ておくことを指導していました。非常にシンプルなことだが普段のトレーニングでは指導者も選手も意識がどうしてもパスを受ける、出すことの方に向いてしまっているため指導をしているポイントが1ランク上のものであった。試合を意識したトレーニングとはこのようなものなのか、と感心しました。
4日目以降はトレーニングの強度を上げ、引き続きボールをつなぐことを意識したトレーニングを行いました。対人プレーやより多くの人数が関わりパスをつなぎシュートまでもっていくようなものです。この頃には生徒たちは時差や気候に対応し始め、トレーニングの意図をつかみ、ペッピーさんの助言や多くのことを吸収できるようになっていました。この間の指導も徹底的にマークを外す動きやポジショニングについてピッチをワイドに使うことなどです。
そのおかげもあり、近隣のクラブチームとの親善試合ではボールを大事にして細かいパスを中心に攻撃を組み立てるサッカーを意識して実践することができました。さらにキャンプ終盤に行われたアルゼンチン1部リーグのクラブアトレティコラヌースのユースチームとの親善試合ではその成果や日本で取り組んでいたプレスのトレーニングの成果もあり、スコアレスドローでしたが今回のキャンプの集大成となるような非常に良いゲームをすることができました。
正直なところラヌースとの試合はアルゼンチンでもトップクラスの実力をもったチームであるため大差がつくことを覚悟していました。しかし、ペッピーさんたちの指導スタッフのおかげで期待以上のゲームをすることができました。前日から試合までのモチベーションのもっていき方やハーフタイムでの声かけなど細心の注意を払って生徒たちに接しているということが結果に出てきたと感じています。
文化的交流も非常に良い経験になりました。普段の食事は学校の食堂でしましたが、お昼時になると多くの中学生や高校生も食堂にきて食事をとります。同じテーブルで生徒たちは食事をしましたが南米特有の陽気な人柄もあって食堂でコミュニケーションをとる姿がありました。その中で生徒たちは簡単なスペイン語を覚える、英語で自分の気持ちを表現することに楽しみながらも必死になって取り組んでいたように思います。度々振る舞われたマテ茶は非常に美味しくお土産品として多くの生徒が購入していました。ブエノスアイレス観光ツアーでは大統領府であるピンクハウスや5月広場、世界三大劇場のコロン劇場といった有名な施設や「南米のパリ」と呼ばれるヨーロッパを意識した街並みを散策しました。
また、アルゼンチン1部リーグ「リーベルプレート対ベレス」の試合観戦では本場の熱狂的なサポーターが生み出すスタジアムの雰囲気や選手が激しくぶつかり合う姿を見て日本では考えられないようなサポーターの熱狂具合に驚きつつ、インテンシティの高いプロの試合を見て自分のプレーに生かそうとしていました。特にもゴールが入りそうな際には観客は毎回立ち上がる、惜しいプレーの際にスタジアムはため息に包まれる、ホームチームのゴールが決まった際には地鳴りのようにスタジアムは揺れ、歓声をあげていました。日曜日の遅い時間の試合であるにも関わらず多くのサポーターが来場して1プレー1プレーに注目をして観戦を楽しんでいる姿はサッカー文化が強く根付いているからなのだと感じました。
今回の研修では多くの方々のご配慮、ご尽力で個々にとっても盛岡中央高校サッカー部にとっても大いに収穫がある研修となりました。帰国後の新人戦では準優勝という結果もアルゼンチンで学んだことが成果として出始めている証であると思います。携わっていただいた方々への感謝を忘れることなくこれからもサッカー部としての活動や盛岡中央高校の国際交流活動を続けていきたいと思います。